日本企業のアフリカ投資、覚書実行は2割弱

以下が、日本主導でやってきた「アフリカ開発会議」の8月開催での「横浜宣言2019」を安倍首相が述べたのです。

御列席の皆様「アフリカに躍進を!人,技術,イノベーションで」とのテーマの下,3日間にわたって開催されたTICAD7が,ここに閉幕します。

アフリカでは今,若い人口が急増し,イノベーションにより次々と新たなビジネスが誕生し,大陸ワイドの自由貿易協定が結ばれ,ダイナミックな発展が進展しています。今回のTICAD7では,アフリカの新たな未来の姿について,アフリカ各国,日本,国際機関,パートナー国,市民社会など,多様な立場から,活発な議論が行われました。議長として,全ての皆様の貢献,特に,共同議長を務めていただいたエルシーシ・エジプト大統領,そして共催者の皆様に,心から御礼申し上げます。3日間の充実した議論は,「横浜宣言2019」と,その具体的道しるべである「横浜行動計画2019」に結実しています。これらの成果文書を,皆様とともに採択したいと存じます。御賛同いただける方は拍手をお願いいたします。ありがとうございます。これにて「横浜宣言2019」と「横浜行動計画2019」は採択されました。

6月に主催したG20大阪サミット,そしてTICAD7直前まで参加していたG7ビアリッツ・サミットでも,アフリカは,重要なテーマでした。このTICAD7においては,これまでの議論の積み重ねの上に,ダイナミックに発展するアフリカのパートナーとなっていくためのしっかりとした方向性を打ち出すことができました。アフリカ自身の平和と安定への取組が進展しているアフリカの角については,サヘル地域と併せ,国際社会の連帯を強化することができました。

TICADは,1993年に誕生した時から一貫して,アフリカのオーナーシップを尊重するフォーラムです。日本は,国際社会のパートナーと連携しつつ,アフリカ自身が掲げるビジョン,「アジェンダ2063」の実現を後押しすべく,引き続き着実な取組みを実施してまいります。私は,6年前のTICADVで初めて,民間企業との対話を導入しました。

そして,3年前のTICADVIの際には,多数の日本企業の代表とともに,ナイロビを訪れました。21世紀「最大のフロンティア」と言われるアフリカの成長が現実のものとなる中,民間セクターからアフリカへ熱い視線が送られています。そのことを裏付けるかのように,今回のTICAD7には,TICADVIの2倍を超える企業からの参加がありました。今回のTICAD7は,ダブルEダブルI,すなわちアントレプレナーシップエンタープライズ,インベストメントとイノベーションを高みへ押し上げるニューTICADとして生まれ変わりました。日本企業は,人を育て,技術を伝え,相手国や地域社会と共に発展しています。日本政府は,民間企業のアフリカにおける更なる活動を後押しするため,支援を惜しみません。躍進するアフリカの未来に,様々な形で,日本とアフリカのパートナーシップの実り多い成果を確かに見いだせることを,今から楽しみにしています。

 

そして今日の報道。

政府の旗振りにもかかわらず、日本企業がアフリカ投資に二の足を踏んでいる。日本とアフリカ企業が結んだ事業化の覚書のうち、実現したのはこの3年間で2割以下にとどまることが分かった。アフリカ側の資金不足などがネックとなっている。政府は「アフリカ開発会議TICAD)」を主催して日本企業にアフリカ投資を促しているが、官民の認識には差があるようだ。

TICAD閉幕後、握手する安倍晋三首相(右)とエジプトのシシ大統領(8月30日、横浜市)=共同

TICAD閉幕後、握手する安倍晋三首相(右)とエジプトのシシ大統領(8月30日、横浜市)=共同

 

アフリカ進出支援を手掛けるコンサルティング会社アフリカビジネスパートナーズ(ABP、東京・中央)が、2016年の前回TICADで結ばれた覚書の内容と現在の状況を調べた。TICADはアフリカ各国や国際機関の代表が、アフリカの開発や民間投資を話し合う国際会議。2019年は8月28~30日に第7回TICADが横浜で開かれた。

前回のTICADで民間が関わった約50件の覚書のうち、9月中旬時点で実行されたのは、豊田通商によるケニアの医療関連企業への出資など9件にとどまる。調査協力や政府開発援助(ODA)事業など、ビジネスを目的としない案件は除外している。

前回のTICADでアフリカ企業と覚書を結んだ、ある企業の関係者は「アフリカ側は資金に余裕がなく、日本や地元の政府援助がないと事業化は難しい」と説明する。

アフリカの人口は2050年に25億人にほぼ倍増するとの試算がある。巨大市場を狙って、欧米や中国企業などが進出を加速するが、日本勢の動きは低調だ。2017年の日本のアフリカ向け海外直接投資残高は78億ドル(約8400億円)と中国の5分の1以下にとどまる。

ABPの梅本優香里代表は「現地の需給を見極めれば、日本企業にも大きなチャンスがあるが、中規模企業の動きは鈍い」と指摘する。治安や法制度の未整備などのリスクを警戒しているほか、アフリカで根を張る第三国企業との連携などに日本企業が消極的なことも一因とみられる。

50以上のアフリカの国から首脳らが参加するTICADと、企業のニーズとのずれを指摘する声もある。治安や保健衛生などテーマが幅広く、「企業の具体的な商談につながりにくい」との不満を持つ企業もある。

アフリカで事業を展開する日本の大手企業の元幹部は「アフリカすべてにビジネス機会があるわけではない。政府は有望な地域・分野を絞って協力を深めてほしい」と訴える。

TICADはもともと、日本が国連安全保障理事会常任理事国入りを目指し、加盟国の4分の1を占めるアフリカとの幅広い関係強化を図った経緯がある。常任理事国入りの議論が盛り上がらない中で、「TICADを民間対話と政府対話で分けるなどの改革が必要だ」(日本政府関係者)との声もある。

CO2を生かす クリーンな燃料 実現探る

日立造船の柏工場(千葉県柏市)の一角に銀色に光る幾本もの金属の筒が並ぶ。二酸化炭素(CO2)と水素を反応させて都市ガスなどに利用できるメタンを作る「メタネーション」の技術を実証している現場だ。

CO2と水素を反応させてメタンを合成する=日立造船提供

CO2と水素を反応させてメタンを合成する=日立造船提供

筒の中にはニッケルを含む特殊な触媒があり、入り口から水素とCO2を通すと化学反応が起きる。出口からはメタンと水蒸気が出てくる仕組みだ。メタンは1時間当たり12.5立方メートル発生する。平均的な家庭の約10軒分の使用量に相当する。

原料の水素を得るために化石燃料を使えばCO2排出を抑制する効果はない。同社は大型の太陽光発電などの再生可能エネルギーや余剰電力で作った水素を活用する「CO2フリーメタン」の実現を目指している。

軽くて爆発も起こす水素は貯蔵や輸送に手間がかかる。メタンにすれば都市ガスで使っている既存のインフラをそのまま使える利点がある。泉屋宏一地球環境ビジネス開発推進室長は「早期に実用化し、温暖化防止に貢献したい」と力を込める。

「インパクト投資」に課題 社会への好影響、数値化カギ

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のニューズレター「モラル・マネー」10月2日号では、社会にもたらすプラスの効果を勘案して投資先を選ぶ「インパクト投資」の実績を数値化する試みについて論じた。主な内容は以下の通り。

世界各国の首脳がニューヨーク市に集った国連総会が幕を閉じた。国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた活動が本格化することになる。

インパクト投資を推進する団体「グローバル・インパクト・インベスティング・ネットワーク(GIIN)」のアミット・ボウリ代表は「先週は世界の首脳が集まり、SDGsの実現に尽力することを誓ったり、様々な計画を提案しあったりするなど、すばらしい1週間となった。だが、こうした発言を実行に移すための具体的な道のりを考えた途端に、酔いもさめる気分になる」と語る。

ボウリ氏の理想を実現に移すためには2つの課題に取り組まなくてはいけない。「インパクトとは何か」をきちんと定義し、そしてそのインパクトを数値化してみせる必要があるのだ。

2日にオランダ・アムステルダムで開幕したGIINの年次総会では、「インパクトの明確化」が話題の中心となっている。提供されたデータを分析したところ、インパクト投資が実際に社会に良い影響を与えていることが分かった。一例を挙げると、クリーンエネルギー分野に対するインパクト投資のおかげで、約280万人が環境負荷の少ないエネルギーを選択できるようになった。

通常、投資家は財務情報の公開を好まないが、GIINの説得に応じた。多くの投資家にとってデータの公開は初めての経験だった。ボウリ氏は「業界関係者の間で、インパクト投資市場を拡大させるために援助は惜しまないという機運が広がっている」と話す。

ボウリ氏は「金融サービスが『インパクトパフォーマンス』を新たな指標として競うように扱うようになってほしい。そうすれば、世界中が恩恵を受けることができる」と語る。

アフリカのいま 知る絵本

子どもの日常描く現地出版作品紹介 村田はるせ

西アフリカの人々が手がけた絵本を研究し、日本で紹介する活動を続けている。コートジボワールベナンブルキナファソセネガルといった国々を訪れて絵本を集め、作家や画家、編集者に話を聞いてきた。

 

アフリカの作家による絵本の刊行が進んでいる

アフリカの作家による絵本の刊行が進んでいる

ここに挙げた国々で出版される絵本のほとんどが、現地の公用語のフランス語で書かれている。1960年まで続いたフランスの植民地支配の影響が残っているのだ。今でも学校の授業はフランス語。書店や図書館の本も、大多数はフランスから輸入されている。

輸入された絵本に、アフリカの子どもたちの生活が描かれていることはほとんどない。主人公も舞台も遠く離れたヨーロッパのことばかりになると、アフリカの子どもたちが登場人物に共感してお話にのめり込むのは、難しくなってしまう。

この状況を懸念して、アフリカの日常や文化が描かれた本を、アフリカで出版する試みが90年代に本格化した。その先駆者がコートジボワールの作家、ヴェロニク・タジョだ。彼女は同国北部に住むセヌフォという民族の布絵に触発された繊細な図柄の絵本を描き、アフリカの豊かな伝承の世界を子どもたちに紹介するようになった。

彼女の最初の絵本「おどりの神さま」は、都市化の中で忘れられた伝統的な仮面の神を描く。仮面は昔を知らない都会の子どもたちに「都会で途方に暮れた時、悲しくなったとき、私を呼びなさい」と語りかける。

タジョはヨーロッパ人が描くアフリカについて「善意にあふれてはいるが、細部を見ると現実とは違う」と評している。豊かな自然とか、戦争、貧困、飢餓とか、アフリカと聞いて想像しがちなイメージも間違ってはいない。でも、それだけがアフリカではない。子どもたちは、もっと多様な現実に直面し、喜んだり悩んだりしている。

同じコートジボワールの作家ファトゥ・ケイタの「すえっこシナバニ」は、小さな弟の世話に気を取られる両親を見て、不安になった少女シナバニが主人公。赤ちゃん返りしてぐずる彼女の姿は世界中の家庭で見られる光景だろう。ミュリエル・ジャロの「ビビはいや」シリーズの主人公は幼稚園や雨、野菜が嫌い。登場人物の服装や家の様子は西アフリカだが、ビビみたいな子はどこにでもいそうだ。

2000年代に入るとベナンの「アフリカの小川」という出版社が、周辺国の小規模出版社との共同出版を始めた。経営者のベアトリス・ラリノン・バド自身も作家だ。彼女たちの努力を通じ、現地出版の児童書の流通が増え、作家や画家が育つ土台が、少しずつだが整ってきている。

私は90年代に青年海外協力隊としてニジェールに滞在し、そこでアフリカ文学の魅力を知った。帰国後、アフリカ文学を大学で勉強する中で偶然知り合ったコートジボワールの映画監督にタジョを紹介され、2001年からたびたび西アフリカ各国を訪れている。

同地の子どもの読書環境は、日本と比べものにならないほど貧しい。それでも作家や画家に小さいころの話を聞くと「物語の中に入ろうとするかのように、本を耳の下に置いて寝た」などと、本への愛を語ってくれる。

こうした西アフリカの絵本事情を知ってほしくて、15年から日本各地で絵本展を開いてきた。18年にはタジョの絵本の日本語訳「アヤンダ おおきくなりたくなかったおんなのこ」(風濤社)も出版できた。ささやかな活動が、アフリカを知る入り口になればと願っている。(むらた・はるせ氏=アフリカ文学研究者)

金融市場に気候変動の影

9月下旬にニューヨークで開かれた国連総会の会合では、10代の環境活動家、グレタ・トゥンベリさんが気候変動に対する緊急対策を呼び掛ける熱烈な演説で話題をさらった。

 

 

スピーチは衝撃的だった。だが、あれだけの熱弁の後でも、投資家がまだ気候変動がもたらす重大性に気付いていないのであれば、別の出来事に目を向けてほしい。国連が支援する「責任投資原則(PRI)」という団体が、「現在の金融市場は、気候変動に対して目先実行されそうな政策を十分に織り込んでいない」と警告する報告書を発表したのだ。

実際、約500社のグローバルな資産運用会社も加盟しているPRIは、「2025年までに、気候変動への対策が遅れたことによる強烈、唐突かつ無秩序な」市場の反応があると予測している。平易な言葉で言えば、市場のショックを予想しているということだ。

この言葉が抽象的すぎると思うなら、米マッキンゼー・アンド・カンパニーコンサルタント、ディコン・ピナー氏が国連で、「無秩序」な価格調整が起きるかもしれない場所をいくつか例示している。

もともと低湿地が多いことに加え、近年は大型ハリケーンによる被害が増えている米フロリダ州などの沿岸地域は、金融機関、保険会社、住宅所有者に資産価格のショックをもたらす恐れがある、と同氏は警鐘を鳴らした。スペインやフランス南部、ギリシャ、イタリアなど、干ばつの増加が信じがたいほどに予想されている場所も同様だという。

■慢性的な洪水被害が保険料率押し上げる

一方、総会の週に国連本部の議場で飛び交っていた分析は、さらに衝撃的だった。

例えば環境問題専門のコンサルティング会社ジュピター・インテリジェンスは最近、米国の銀行と保険会社のためにも運用している理論モデルのシミュレーションを筆者に見せてくれた。

フロリダ州南部の住宅ローン10万件の合成ポートフォリオ(実存する銀行の融資残高に基づくデータ)を基に試算した結果、ジュピターは同地域の洪水被害による損失が今後20年間で3倍に膨らむと予想している。

その背景には、例えばハリケーンなど、ニュースの見出しを飾るような大規模な自然災害の頻度が高まっていることがある。だが、損失の拡大が予想される最大の理由は、床上浸水が30センチに満たなくても、数年ごとに一段と多くの住宅を襲う洪水など、慢性的なリスクが増大していることだ。

これは当然ながら、住宅保険や災害保険を提供する保険会社にとって痛手となる。被災により住宅を失ったり、住宅価格が下がったりしてもローンは支払い続けなければいけない、一部の住宅所有者にとっても惨事となるだろう。

なお、米国で個人が不動産を買う際は30年ローンを組むのが一般的だが、住宅価格などを基に算出される住宅保険の料率は毎年見直される。近年、気候変動による災害が増えていることを踏まえれば、保険料率は上昇し続ける可能性が高く、そのために住宅ローンを払えなくなってデフォルト(債務不履行)を起こすケースが予想される。借り手と貸し手の双方が打撃を受ける恐れがあるわけだ。

ジュピターのリッチ・ソーキン最高経営責任者(CEO)は「こうした事情は市場に織り込まれていない」と指摘する。また、マッキンゼーのアナリスト、ハンス・ヘルベックモ氏は「ジュピターのこの分析に基づくと、当社の分析では今後10~20年で、(住宅ローンのデフォルトによる)損失率は07年(のサブプライム危機)と似た水準に達しかねないことを示している」と語っている

■投資家や政治家、重大性気付かず

だが、同じくらいショッキングなのは、多くの投資家と政治家がまだ、こうした気候変動に伴う金融リスクについてそれほど気に留めていないようにみえることだ。

この原因の一つは、悪いニュースを自発的に有権者に伝えようとする政治家が少ないことにあるだろう。

もう一つの問題は、金融業界と政策立案者が、10年以上前に住宅のサブプライムローン(信用力の低い層への融資)がもたらす危険を大半の投資家が理解できなかったのと同様の構造的パターンに陥っていることだ。

現在、ごく一部の保険専門家と気候変動の科学者はリスクを理解している。ヘッジファンドなど、一部の抜け目ない金融業者も現状を知っている。しかし、大半の一般投資家は気候変動がもたらす影響の大きさをほとんど理解できていない。気候変動に関する科学が、それこそ住宅ローンのデリバティブ金融派生商品)と同じように技術的に複雑なためだ。資産運用のプロでさえ、保険の予想に埋め込まれている確率を割り出すのに苦労している。

その結果生まれるのが、極端な「情報の非対称性」だ。さらに悪いことに、金融機関と政府機関における縦割りが合理的な計画策定を阻害する。

また、気候変動という問題が長期的な課題であるため、一部の投資家は米連邦緊急事態管理局(FEMA)のような政府機関が、災害保険に加入していなかった住宅に対する助成など、セーフティーネット(安全網)を設けるだろうと勝手に思い込んでいる。

この独りよがりな見通しは恐らく間違っている。住宅ローン市場をショックから守るため米国の連邦機関が対応策を導入するだろうという、08年の金融危機以前に広まっていた考えと変わらないのだから。

サブプライム危機と同じ道をたどるか

では、この話は最終的にどこへ行き着くのか。PRIなどの研究を受け、投資家と保険会社、銀行が資産価格のスムーズな調整を可能にするようなタイムリーな行動に出ると考えられたら、どれほどいいことか。世界各国の政府がトゥンベリさんの要請を聞き入れて気候変動の問題に取り組み、行く手に待ち受ける気候変動の問題について有権者に対してもっと正直になれたらなおさらいい。

だが、こうした楽観的な方向に話が進むことに期待してはいけない。歴史は、極端な情報の非対称性が発生すると、市場にショックが起きることを教えてくれている。これはまさに、サブプライム住宅ローン危機で起きたことだ。気候変動でも似たような展開になったとしても想像に難くない。

By Gillian Tett

(2019年9月27日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

人権配慮、取引先も 味の素やANA、NGOとタッグ

SDGs意識高まる

味の素など日本企業が原材料の調達先から業務の委託先まで「人権」に配慮するサプライチェーンづくりを急いでいる。非政府組織(NGO)など外部の専門家と組み、自社では把握しづらい取引先の労働実態などの情報を集め、早期に改善できるようにする。人権配慮のサプライチェーンは国連の指針に沿って国も行動計画づくりに乗り出している。

グローバル企業に人権配慮を求める要求は強まっている。国連や経済協力開発機構OECD)が企業に対し、サプライチェーン全体で人権、環境を守る行動を求める指針を打ち出したのがきっかけだ。取引先の現状は自社だけではチェックしきれないことが多く、人権NGOなどの助力を得るケースが増えている。

味の素は取引先を含めて人権を守るためのグループ方針を定め、複数の段階でデューデリジェンス(精査)をかけている。まず国別に影響を調べ、リスクが高そうな地域を特定。人権問題を専門とするNGOとともにタイでは、取引先の冷凍鶏肉を扱う工場などを調査した。

現地の業界団体やNGOにも聞き取り調査し、カンボジアミャンマーから流入している移民の労働環境も調べた。取引先の企業はNGOスマートフォンなどを通じて移民労働者から生活相談を受ける仕組みを活用していた。味の素はこの仕組みを広げられないか探っており、「労働者の生の声を聞く体制づくりの参考にしたい」という。

 

東南アジアを中心にパーム油を多く調達する国内最大手の不二製油グループ本社も、本社に海外の労働者からの苦情を受け付ける窓口を設けた。労働者の実態は現地の調達先の企業から聞き取るだけでは把握しづらい。パーム農園や搾油所で働く労働者の問題について、人権NGOや労働者などからメールや電話、手紙などで苦情を受け付けている。

ANAホールディングスは、主に機内食サービスを対象にサプライチェーンのチェックを強化している。米NPOブルーナンバー財団と組み、国内外で関わった生産者、個人や組織が追跡できるようにした。

日本の空港で清掃や荷物運搬、機内食サービスの委託先で働く外国人労働者にもインタビューを実施。労働環境が適切かどうかを調べている。

企業が対応を急ぐ背景には、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)への関心が広がったことがある。消費者による監視も強くなってきた。取引先で起きた問題への対応が遅れ、SNS(交流サイト)などで悪評が広がれば、不買運動が起きたり企業イメージを損ねたりするリスクが大きくなっている。

2017年には著名ファッションブランドを運営する会社が縫製を委託していた工場で、中国人技能実習生が違法な長時間労働を強いられていたことなどが報じられ、ネット上で不買運動を呼びかける声が上がった。

SDGsに沿った活動に取り組むグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと弁護士らは2日、企業が社内外から人権に関わる情報を集め、解決する手引の素案を公表した。高橋大祐弁護士は「リスクをゼロにするのは難しいが、早期に解決を図る体制づくりが企業価値の向上につながる」と話している。

温暖化、さらに加速か 予測に使う「気候感度」見直し

CO2削減前倒しに切迫感

国連本部で23日、開かれた気候行動サミットでは欧州などの複数の国が温暖化ガス削減目標の引き上げを表明した。しかし、最新の研究では温暖化のペースがこれまでの想定よりも速い可能性が出てきた。事実なら国際枠組み「パリ協定」の目標達成は遠のき、各国は一層の削減を迫られる。

パリ協定は21世紀末にかけての地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満とし、さらに1.5度以下をめざす目標を掲げる。最近は熱波や豪雨、洪水などの被害を減らすため、「1.5度目標」がより重視されるようになってきた。

そうしたなか、温暖化予測の様々な計算の基本になり、対策を左右する「気候感度」という数値の「見直し」が進む。この数値は大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が倍増すると地球の平均気温が何度上がるかを示す。

国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)は2013年、第5次評価報告書(統合報告書は14年)で気候感度を1.5~4.5度とした。関係者の話や科学誌の分析を総合すると21年に出る第6次で気候感度の上限は5度以上となり、最適値は3~4度の間に入りそうだ。

1.5度目標達成には、多くの国がめざす「50年に世界の温暖化ガス排出が実質ゼロ」では不十分になり、もっと早く減らす必要が出てくる。

気候感度は07年の第4次報告書では2~4.5度とされた。第5次で下限値が下がったため「温暖化はこれまで誇張されていたのではないか」との声も出て、温暖化懐疑派が勢いづいた。これだけ重要な数値がなぜ曖昧なのか。

IPCC報告書の土台となる研究は日米欧などの研究機関がスーパーコンピューターを駆使して進めている。世界気象機関などによる「統合モデル相互比較計画」(CMIP)で、共通ルールで計算・集約してきた。

気候感度に幅があるのは、計算結果にばらつきがあるからだ。突き詰めると温暖化のメカニズムが理解しきれていない。「計算モデルのある部分を改めると、別の部分のずれが大きくなってしまう」と東京大学の渡部雅浩教授は説明する。

大気汚染物質などの微粒子(エーロゾル)の影響は特に計算が難しいとされる。上空で雲の生成に必要な「核」となるが、どこでどんな種類の雲ができるかによって太陽光反射が異なる。

火山噴火、森林火災などで発生する大量のすすも無視できない。雪や氷を覆うと太陽光の反射が減り熱の吸収が増える。その効果を、ある程度正確に計算できるようになったのは最近のことだ。

このほか、気温を左右する海水温は太古の昔から自然変動する。人間活動に伴う変動と切り分けるのは容易ではない。

今後も新知見が得られるたびに、温暖化予測は修正されるだろう。結果は「対策コストに直結する」(筑波大学の田中博教授)だけに経済的、社会的影響は重大だ。不確かさがつきまとうのを前提に、温暖化がもたらしうる損失と対策コストをてんびんにかけ、費用対効果が最大になる解をみつけていくしかない。

編集委員 安藤淳氏)

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