温暖化対策「米抜き」進む 米、パリ協定離脱通告

一方民間では取り組み加速、逆に日本は再エネ普及に遅れ

米国では再生可能エネルギーの普及が拡大する(米テキサス州)=ロイター

米国では再生可能エネルギーの普及が拡大する(米テキサス州)=ロイター

ブリュッセル=竹内康雄】トランプ米政権は4日、2020年以降の地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると国連に通告した。2020年の米大統領選をにらんだ選挙対策の色彩も強いが、世界は「米国抜き」を見越した体制づくりに動き始めている。日本も対応が遅れれば取り残されかねない。

欧州連合EU)は地球温暖化対策を十分にとらない国に対し輸入関税を引き上げる「国境炭素税」制度を創設する検討に入る。生産過程で温暖化ガスの排出が多い鉄鋼や石油化学の関連製品などが対象になりうる。念頭にあるのは米国やブラジルだ。

EUは50年の温暖化ガス排出を実質ゼロにする方向で加盟国間の調整を進めるが、経済界には「企業の国際競争力の維持に注意を払うべきだ」(ビジネスヨーロッパ)との懸念も強い。EUは米の離脱を織り込んだ上で、規制回避を狙う企業が米に拠点を移転する抜け穴封じを急ぐ。

 

パリ協定はすべての国が温暖化対策に取り組む初めての国際協定として2015年12月に採択され、2016年11月に発効した。スピード発効を主導したのが世界の2大排出国である米中だ。当時のオバマ米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の合意が呼び水となり、各国が協定批准に向けて雪崩を打った。

だが、トランプ米大統領は自国の石炭・石油産業への配慮から、就任後の17年6月にパリ協定からの離脱を表明した。米の離脱手続きが完了するのは20年11月4日、次期大統領選の翌日だ。

とはいえトランプ政権が離脱手続きに入っても、米国の温暖化防止の取り組みに当面は大きな影響は出ないとの見方も強い。米企業には「消費者の環境意識の高まりに配慮せざるを得ない」との声が強く、カリフォルニア州など環境規制に熱心な自治体も少なくないためだ。

アマゾン・ドット・コムは9月、2040年までに事業から出る温暖化ガスを実質ゼロにする方針を表明した。目標達成の一環として、電気トラック10万台を配送用に新規購入する。事業活動で使う電力の全量を再生可能エネルギーでまかなうことを目指す企業連合「RE100」にもアップルやウォルマートなど多くの米企業が名を連ねる。

実際、米国では排出の少ないシェールガスや太陽光・風力といった再生可能エネルギーの普及が拡大し、排出量を押し下げている。米エネルギー情報局(EIA)によると、2019、2020年は二酸化炭素(CO2)排出量は前年から減る見通しだ。

環境や社会、企業統治を重視する「ESG投資」など、マネーの流れも環境重視になりつつある。米環境シンクタンク、世界資源研究所のスティアー所長は「米国では州や都市、企業はパリ協定に沿う形で行動している」と話す。

ESG投資 (投資家が、環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)に対する企業の対応を考慮して行う投資)

 

世界最大の排出国である中国も国際世論を無視できなくなっている。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、中国では2018年までの10年間に風力の発電容量が22倍、太陽光は700倍弱に急拡大し、水力を合わせた再生エネで世界の30%と2位の米国(10%)に差をつける。ハイテク産業育成策「中国製造2025」でも再生エネは重点分野の一つだ。

取り残されかねないのが日本だ。小泉進次郎環境相は5日の記者会見で「トランプ大統領に翻意を促してもおそらく不可能だ」としたうえで、引き続き米との協調の余地を探る考えを示した。日本は温暖化ガスを2030年度までに2013年度比26%削減を目指すが、原子力発電所の再稼働が停滞し、再生エネの普及も遅れる現状では達成困難だ。

12月にはスペイン・マドリードで第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が開かれる。関係者によると、米国の離脱通告は織り込み済みで、各国がパリ協定に明記された目標達成へ努力を続ける意志を示す方向で調整が進む。

ただブラジルなど本音では温暖化対策に積極的でない国もある。中国やインドなど途上国が協定に加わったのも「先進国が温暖化対策を強化する」のが前提だ。米離脱に続く国が出るリスクはゼロではない。

パリ協定は各国が自主的に排出削減目標を定める仕組みだ。協定は産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えるのを目標にするが、現状の各国計画では約3度上昇するとされる。米離脱長期化で温暖化対策への熱が冷めれば、各国は野心の低い目標を設けかねず、実効性も問われる。

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