政府 200社とASEANで都市インフラ整備 9日合意へ
政府が開発協力する東南アジア諸国連合(ASEAN)の都市インフラ整備の構想に国内の約200の企業・団体が参加する。交通渋滞の緩和策やキャッシュレス決済システムの構築など、対象となる26都市の機能を効率化する事業計画に基づきノウハウを持つ日本企業が個別に支援する。経済成長に伴う旺盛なインフラ需要を取り込むため、官民が協力して中国や韓国などに対抗する。
国土交通省、外務省、経済産業省など関係府省はASEANの高官を招いた会合を10月8~9日に横浜市で開く。大手メーカーや商社、プラント、銀行など幅広い業種から約200の企業・団体が参加する「スマートシティー・ネットワーク官民協議会(仮称)」の立ち上げを確認し、日本とASEANに加盟する10カ国が協力する方向性を示す文書をまとめる。
スマートシティーは人工知能(AI)やIT(情報技術)、ビッグデータなどを使って社会インフラを効率化したり環境に配慮したりする都市だ。ASEANは経済成長や人口増で交通渋滞や廃棄物処理など深刻な社会問題に対処する体制整備を急いでいる。
すでに実証をはじめる計26都市を選んでおり、下水処理や水資源管理など旧来型のインフラだけでなく、電子決済や最先端の技術を使う計画も並ぶ。都市ごとにプロジェクトチームを設け、現地のニーズを把握したうえで日本政府や企業が持つ技術や資金支援策などを提案する運びだ。まずは来春までに2~3の都市との合意をめざす。
各都市の計画で目立つのは都市への人口集中による交通渋滞を緩和する取り組みだ。ベトナムの首都ハノイではITを使った交通管理システムを開発するほか、ミャンマー第2の都市マンダレーは交通データの分析・管理などを課題にあげる。
マレーシアのコタキナバルは次世代型路面電車(LRT)など公共交通システムの構築を検討。インドネシアの首都ジャカルタは電車やバスなどすべての公共交通機関の決済システムを統合してキャッシュレス払いできるようにする仕組みを整える計画だ。
安倍政権はインフラ輸出を成長戦略の中核に位置づける。第2次安倍政権が発足した直後の2013年は15兆円だった海外でのインフラ受注は17年末時点で23兆円で、20年までに30兆円に増やす目標を掲げる。
米調査会社IDCはスマートシティー関連の市場規模は23年には約20兆円と18年に比べ倍増すると見込む。日本政府はこれまで新興・途上国のインフラ整備の協力で主体だった道路やダム、発電所などに加え、日本企業が強みとする都市の効率化や環境負荷の低減につながる基盤づくりにも幅を広げるねらいだ。
影響力を増す中国をけん制する思惑もある。中国は経済援助を続けるカンボジアやラオスなどと結び付きを強め、ASEANでのインフラ開発に強い関心を示す。中国・アリババグループはマレーシアでの事業に参画する。米国や韓国も現地のインフラ開発に力を入れており、日本も官民あげて結び付きを強化する。