アフリカ開発会議。アフリカ首脳とマラソン会談 首相、中国を意識
安倍晋三首相は29日、アフリカ開発会議(TICAD)のため来日しているアフリカ諸国の首脳級18人と会談を重ねた。28日から31日までの間、約40人の首脳級と会談する予定だ。インフラ支援などを通じてアフリカに強い影響力を持つ中国を意識し、一連のマラソン会談では、日本のきめ細かい支援を訴えた。
28日に開幕した第7回TICADには過去最高の42カ国の首脳級が参加した。首相は会議の議長役を麻生太郎副総理・財務相に委ねつつ、個別の会談に注力している。
29日はエチオピアやナイジェリアなどの首脳級と会った。エチオピアのアビー首相との会談では農業の生産性向上のため、新たに農業専門家を派遣する方針を伝えた。
28日はエジプトや南アフリカなど7カ国の首脳級と会談した。日程が特にタイトだった29日は15分程度の会談が大半だったが、アフリカで対中債務の返済が滞り中国にインフラ利用権などを奪われる「債務のわな」に陥る国が相次いでおり、一連の会談を巻き返しの機会と位置づけた。
首相は29日、中国による「借金漬け」が指摘されるジブチのゲレ大統領とも会談し「債務持続性の確保に向けた取り組みを後押しする」と伝えた。ジブチはアラビア半島対岸の「アフリカの角」に位置し、自衛隊の拠点を持つ日本にとって安全保障上の要衝だ。首相は自衛隊の活動への継続的な支援も求めた。
マラソン会談は国連安全保障理事会の日本の常任理事国入りを含む安保理改革に向け改めて協力を要請する契機にもなった。アフリカの首脳級が一堂に会する機会は少ないからだ。首相は会談の大半で安保理改革への協力に関し意見交換した。
アフリカには54の国があり、国連加盟国の約4分の1超を占める。日本は国連安保理で拒否権を持つ常任理事国入りを目指しており、安保理改革にはアフリカ各国の票の獲得が重要となる。
コンゴ大統領、債務のワナに懸念
エボラ熱「流行を抑えた」
コンゴ民主共和国(コンゴ、旧ザイール)のチセケディ大統領は29日、日本経済新聞などの取材に応じた。大国が借金の代わりに資源権益やインフラ施設を奪う「債務のワナ」について「遺憾だ」と懸念を表明した。債務問題の解決に向け、日本の円借款などに期待を示した。同国で感染が拡大したエボラ出血熱については「流行を抑え込んだ」との認識を示した。
第7回アフリカ開発会議(TICAD)で訪れた横浜市で取材に応じた。チセケディ氏は「中国による債務のワナの問題をどう評価するか」との質問に対し、名指しを避けながら「いくつかの国が(融資を利用して)圧力をかけていることは遺憾だ」と述べた。
コンゴの対外債務は50億ドル規模(約5300億円)とされる。米ジョンズ・ホプキンス大の調査によると、中国からの借り入れが目立ち、2000~15年の累計の対中債務は31億ドルに達する。
コンゴはコバルトやダイヤなど資源に恵まれている。チセケディ氏は資源輸出により外貨を稼いでいるため、「国家財政が破綻することはない」とした。そのうえで日本や国際機関の資金供与や融資に期待を表明。「円借款は(利子などの)条件が良い」と指摘した。
コンゴで約2000人の死者を出したエボラ出血熱の流行については、新規感染者数が一時の週23人から同10人弱にまで減少したと述べ、「疾病は現在、制御下にある」と主張した。ワクチン提供や検査キットの支援など「国際社会の協力が非常に重要な役割を果たしている」と述べた。
コンゴでのエボラ出血熱の流行は14~16年に次ぐ深刻さで、18年夏以降に約2800人の感染が確認され、8月20日までに1961人死亡した。チセケディ氏はエボラ熱の根絶に向け、「ワクチンの開発や研究所の設立が必要」と述べ、国際社会に支援を要請した。
日本文化をアフリカ首脳夫人に
第7回アフリカ開発会議(TICAD)の開催に合わせ、アフリカ各国から42人の首脳級が来日しています。29日は横浜市内で配偶者を対象に日本文化を体験するイベントが開かれました。アンゴラやニジェールなどが参加し、林文子横浜市長も同席しました。