日本、米の月探査計画に参加 同床異夢の思惑

政府の宇宙政策委員会は17日、月を周回する宇宙ステーション「ゲートウエー」の建設など国際協力で月を探査する計画へ参加する方針を決めた。近く計画を主導する米国へ正式に参加を表明する。しかし米国と日本では月探査の意義づけにズレが残る。日本はどこまで踏み込んで協力するのか、宇宙開発戦略の確立が求められている。

宇宙ステーションゲートウェイ

「早く日本の立場を表明することで貢献のチャンスが増え、信頼関係も深まるだろう」。宇宙政策委員長の葛西敬之JR東海名誉会長はこう説明する。欧州は11月末の閣僚会議で参加方針を正式決定する見通しで、その前に参加表明したい狙いがある。

ただ参加方針の内容を見ると、月探査の位置づけに日米の違いが透けて見える。参加方針では協力項目としてゲートウエーへの技術・機器の提供や物資・燃料補給など4項目をあげた。これらは以前からのゲートウエー建設の議論を踏まえた。

一方で「月探査計画への参画のあり方も含め、国際宇宙探査全体のあり方を検討・整理することが適切」とした。ゲートウエーにとどまらず、米国が新たに打ちだした2024年までに宇宙飛行士を月面に着陸させる「アルテミス計画」を視野に入れたものだ。

月を回るゲートウエーは、地球を回っている国際宇宙ステーションISS)と同様に国際協力で建設する計画。日本は欧州とともに居住棟の建設などに参加する方向で協議が進んでいた。

ただ米国が「アルテミス計画」を発表し、ゲートウエーの構想は大きく変化した。24年までに必要最低限の機能を備えた「第1段階」のゲートウエーを建設。「第2段階」では月開発を進め、火星などへ進出する拠点にする。従来、日本が想定していたのは第1段階までだ。

この違いは9月下旬に来日したブライデンスタイン米航空宇宙局(NASA)長官と山川宏・宇宙航空研究開発機構JAXA)理事長との共同会見でも表れた。

「目標はあくまでも火星だ」。月探査の目的を聞かれたブライデンスタインNASA長官はこう言い切った。月は火星へのステップというわけだ。一方、山川理事長は「地球に近い宇宙(LEO=地球低軌道)の次のステップが月」と説明。ISSで蓄積した有人宇宙開発技術をいかし、月に活動の場を広げるという認識を示した。

ゲートウエーへの参加自体には、これまでも目立った異論はない。宇宙政策委員長代理の松井孝典千葉工業大学惑星探査研究センター所長は「今までの国際協力の枠組みを崩してまで日本が離脱する理由はない。国際協調など科学とは別の意義もある」とする。

ただアルテミス計画の全体となると「有人着陸や資源利用といった新しい考え方が入っている。日本としてどう関わるか決めなければならない」(松井氏)。ゲートウエーとアルテミス計画は区別して考えるべきだ、とする意見は根強い。アルテミス計画全体への協力を期待する米国とは温度差があった。

葛西委員長は「参加方針にアルテミス計画を含む」という認識を示した。しかしゲートウエー建設は明確に協力項目を示した一方で、アルテミス計画全体への協力は20年6月をめどに改定する中長期の宇宙開発の戦略をまとめた宇宙基本計画での議論の対象。明確な取り組みをするかの判断は先送りした格好だ。

ゲートウエーに関連して25年以降の運用方針が決まっていないISSの扱いも問題になる。日本は現在、年約400億円をISS関連に投じている。地球上空400キロメートルの軌道を回るISSに比べ、約40万キロメートル離れたゲートウエーは膨大な費用が必要になる。宇宙関連予算が限られるなか、資金配分をどうするか慎重な検討が求められる。

明確な戦略が決まらないまま拙速で参加しても成果が得られるかは疑問だ。宇宙政策委員の中須賀真一東京大学教授は「すべてに関与するととてもお金がかかる。いいかげんな状態で参加すると大変なことになる」と懸念する。

日本は何を目的に月探査に参加し、米国のアルテミス計画にどこまで協力するのか。明確な戦略を持てるかが問われている。

編集委員 小玉祥司氏、越川智瑛氏)

貧困層の子にモデルの夢を フィリピンで無償校設立へ

貧困層の子どもをモデルにしたファッションショーで記念写真に納まる西側さん(前列中央左)ら(2月、マニラ)=西側さん提供・共同

貧困層の子どもをモデルにしたファッションショーで記念写真に納まる西側さん(前列中央左)ら(2月、マニラ)=西側さん提供・共同

フィリピンの首都マニラの貧困地区で暮らす子どもたちが無償で通えるファッションスクールを設立する計画が進んでいる。2020年9月に「coxco Lab(ココラボ)」を開校し、モデルやヘアメークを通して社会貢献できる人材育成を目指す。

企画に携わっているのは、関西圏の大学生ら約20人でつくるNPO法人「DEAR ME」など。神戸女学院大(兵庫県西宮市)に通っていた西側愛弓さん(24)が15年に設立し、フィリピンで貧困層の子どもをモデルにしたファッションショーに取り組んでいる。

おしゃれを体験して夢や自信を持ってもらうのが目的だったが、子どもたちはショーが終わると、ごみ山のスラムに戻らないといけないのが現実。「モデルなどの夢をかなえるために努力できる環境を整えたい」と西側さん。ココラボの開校を決めた。

14~20歳の男女が対象で、授業料は無償にする。モデルやヘアメークのクラスを設けてオーディションでそれぞれ5人を選抜し、6カ月のレッスンを受ける。その後、各3人に絞り込み、さらに1年8カ月かけて、技術を身に付ける。

卒業した子どもたちがモデルとして活動できるよう受け皿となる会社も起業する方針で、西側さんは「フィリピンの子は、自己表現が上手。ファッションを通じて世界で活躍できるモデルを育てたい」と意気込む。

衣装やレッスン着、鏡など開校に必要な備品は、計画に賛同する企業から提供してもらうという。開校の初期費用を約500万円と見込み、費用の一部に充てるため、クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で10月下旬まで支援を募っている。

〔共同〕

学校通わず、先生は親 ホームスクールじわり

ネットで交流 増える学習教材

学校に行かずに家庭で親と学ぶ「ホームスクール」を選ぶ子どもが増えている。インターネットの普及を背景に、地域の大人や同世代の子と交流したり、オンライン教材を使って学習したりといった環境も整いつつある。不登校の子どもの数は全国で14万人と過去最多になっている。ホームスクールを実践する親子は「学校以外で学ぶ選択肢を社会全体で理解してほしい」と話している。

「石を置いて微生物が生きられる環境をつくっているんだよ」。川崎市の住宅街にある戸建ての庭で、生駒知里さん(41)の次男(11)が自ら作ったビオトープをのぞき、誇らしげに話した。次男は地元の小学校に籍を置く5年生だが、学校にはあまり通っていない。科目にとらわれず興味のあるテーマを探求しながら在宅で学ぶ。

ビオトープ作りは近所の森林公園が主催する生物多様性のフィールドワークで発想を得た。自然科学の専門家の説明や、図書館で借りた本を基に、プラスチック容器に水を張り、水草や砂を入れてメダカを泳がせる。微生物を観察するために顕微鏡を手に入れようと思い立ち、知り合いの中学の理科教諭に電話で相談して購入した。

生駒さんは6年前にホームスクールを始めた。長男(13)が小学1年の秋に不登校になったことがきっかけだった。当初は何とか学校へ行かせようと付き添って通学した。親子ともに沈痛な面持ちで登校することに疑問を感じ、通学をあきらめた。長男は不登校の子どもの学習支援を行う民間のフリースクールにも行きたがらず自宅で過ごすことを選んだ。

その中で、生駒さんは「不登校はむしろ自由に学ぶチャンスでは」と考えるように。知り合いを自宅に呼んでパン作りを学んだり、農家や工作の名人の元を訪れたりし始めた。地域のフリースペースに子どもと遊びに行き、小学校に本を借りに行くこともある。生駒さんは「地域とつながりを持ちながら子どものペースで楽しく学べている」と話す。

各地のホームスクール実践者が連携する動きも広がる。長女(10)と長男(7)が自宅で学ぶ埼玉県越谷市の小田恵さんは、各地の親が登録できる「ホームスクーラーマップ」を18年4月にネット上に作成した。国内外の約220組の親子が登録する。

ネットでつながった親子同士らが水族館や公園などに出掛けるイベントも定期的に開く。小田さんは「子どもが学校に行かないことで、孤独感を抱えている保護者が多い。同世代の子を遊ばせられるのも安心につながっている」。在籍する小中学校の先生とのやりとりや費用、PTAの参加など「情報を交換することで安心してホームスクールを続けられる」との声が多いという。

自宅で学ぶ教材の種類も増えている。デジタル学習教材を手掛ける「すららネット」(東京)は小学校から高校までの算数(数学)、国語、英語の教材を開発し、年間約2千人の不登校発達障害の子どもが利用する。文部科学省は、自宅でIT(情報技術)を活用した学習活動をした場合、一定の条件の下で学校の出席扱いにするとしている。タブレットでアニメーションを見ながら自分で学習を進められ、学校に記録を提出して出席認定を得られる仕組みだ。

NPO法人「日本ホームスクール支援協会」(東京)の日野公三理事長は「家庭と教育委員会や学校が連携し、ホームスクール家庭が孤立しない制度を構築することが大切だ」と話す。

(松浦奈美氏)

対話型授業 スマホ一役 神奈川の全県立高で導入へ

神奈川県立生田高校総括教諭 小原美枝氏 生徒の私物活用/教員の研修充実必要

神奈川県は全ての県立高校で、生徒が私物のスマートフォンなどを学習に利用できる環境を整える。先行導入した県立生田高校(川崎市)の小原美枝総括教諭は、授業を対話型に変える上でスマホなど情報機器の効果は大きいと指摘する。

神奈川県教育委員会は9月、県立高校など全144校への無線LANとインターネット回線の設置をほぼ終え、「BYOD」を可能にする環境を整えた。BYODはBring Your Own Deviceの略。使い慣れた私物のスマートフォンタブレット端末を学校で使えるようにすることを意味する。

導入の背景には高大接続改革がある。これからの大学入試では、高校での活動を記録したポートフォリオの利用やコンピューターを使った試験が想定される。県としても「1人1台端末」による学習環境の整備を急ぐ必要があったが、県立高校生約12万人分の端末を用意するには多くの費用と時間がかかる。

そこで生徒所有の端末を民間回線につなぐ手法でBYOD環境を整え、「1人1台」を実現することにした。これだと回線使用料など維持費の増加は1校当たり月4万5千円程度で済む。前提として(1)神奈川県は高校生のスマホ所有率が97%と高い(2)民間の高速光回線を利用できる地域が多い(3)スマホを持っていない生徒に貸し出すタブレット端末は準備できる――という状況があった。

筆者が勤務する生田高校は落ち着いた校風で生徒の学習意欲は高い。これまでも県の研究校に指定され、タブレットやプロジェクターを授業で活用してきた。2018年度からはBYODのモデル事業校となり、新たにスマホを導入した。

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授業の変化は大きい。ひと言でいえば対話型になり、生徒が発信する機会が増えた。授業支援アプリを入れたスマホから意見や答えを教員の端末に提出したり、生徒同士で瞬時に共有したりすることが普通になった。

2年生の数学を担当している筆者は、この機能を使ってグループで発展的な課題に取り組ませることが多い。生徒は授業前半に基本的な事柄を学び、後半では新たに学んだ知識を使ってスマホに配信された課題をグループで考える。

各グループの解答はスクリーンに出し、生徒は互いの解答を比べて新たな気づきや疑問を得る。解答の過程を質問された生徒は前に出て説明し、さらに別の生徒が発言して授業が進む。生徒の発言意欲が高まり、互いに学び合うことで主体的な学習につながっている。

スマホは学習用具としても役立つ。例えばグラフ作成ソフトを使い、二次関数のグラフを書いたり動かしたりして問題の解き方を考えることができる。一つの数表に各自が実験の結果を入力して共有することもある。

今年入学した1年生の授業も紹介しよう。国語では物語の感想をスマホから提出し、それぞれの意見を比較した。英語ではスマホの音声入力機能を使って互いの発音を聞き比べ、注意すべき箇所を確認。理科ではシミュレーションソフトを使って実験結果を予測し、その理由をグループで話し合うといった具合だ。

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今日では他者と協働して考えたり、情報機器を活用して問題を解決したりする「21世紀型スキル」が求められている。スマホを活用すれば対話型の学習が増え、限られた授業時間の中で効率的にこれらの力を育める。

もちろん、それは教員の指導力があってこそだ。対話型の学習では生徒の学び合いを促すための発問が重要になる。板書が不要になることで生まれた時間をどう使うかも問われる。スマホを使わない場面を意図的につくることも大事だ。

教員には生徒が知識を構築していくためのファシリテーター(支援者)的な役割が求められる。現在は全員がその力量を身につけているわけではなく、今後研修などを充実させる必要もある。

スマホを授業で活用するに当たり、利用ルールを策定した。(1)毎日スマホを持参する(2)充電は自宅でする(3)端末は自己管理(4)ウイルス対策は各自で行う(5)ユーザーIDとパスワードは絶対に他人に教えない――などだ。

黒板の撮影は構わないが、SNS(交流サイト)上での授業に関するつぶやきや動画の配信は禁止。他人のIDの不正利用やハッキング行為、悪口の投稿も厳禁だ。

4月に行う1年生向けのオリエンテーションの中でルールを徹底し、年2回の携帯電話教室と合わせて情報モラルを指導している。当初「授業中にスマホで遊ばないか」「スマホによる生徒同士のトラブルが増えないか」などが懸念されたが、授業規律の乱れや大きな問題は起きていない。

本校を視察に訪れる高校関係者からは「授業でのスマホ活用はハードルが高い」との声が聞かれる。スマホに関し「授業中は出さない」「校内ではかばんにしまう」といった規則のある高校が多いようだ。安全な学校生活のため規制が必要だという思いは理解できる。

だが高校生のスマホ所有率は9割を超え、校門を一歩出ればスマホを使う。学校での使用を禁じて校内だけを安全にするよりも、モラルやマナーを指導し、効果的な使い方を考えさせる方が生徒に有意義ではないか。

ICTはすさまじい速さで進歩しており、高校は生徒に将来必要となる力を身に付けさせなくてはならない。21世紀型スキルの育成にはグループ活動や話し合い、情報機器を活用した課題解決の作業が不可欠であり、スマホは、これらを円滑に行う道具になりうる。

各学校の実態に応じて利用のルールを作り、モラルを十分に指導しつつ、スマホを授業に生かすことを提案したい。

中小の「廃業支援」広がる 債務超過前に買い手探し

後継者難などに苦しみ、未来の展望が描けない中小企業の廃業を支援するサービスが相次ぎ登場している。新生銀行は資産超過のうちに事業整理を促す「廃業支援型バイアウト」サービスを提供。事業承継を目的としたM&A(合併・買収)も増加し、廃業に必要な資金を融資する制度も整いつつある。中小の再チャレンジを促せば、経済の新陳代謝にもつながりそうだ。

 

 

創業70年を超える東京都の内装品卸会社の3代目社長だった高橋義男さん(仮名、56)は今年2月、保有する全株式を新生銀行に売却した。「しばらくは何もしなくていいのよ」。妻の一言で自分が極限状態に追い込まれていたことに初めて気付いたという。

30代半ばで父から会社を引き継いだが、4年前に営業赤字に転落。不採算事業の整理などを進めたが「改善の兆しすら見えなかった」。高橋さんは金策で神経をすり減らし、廃業を真剣に検討し始めた。そこで頼ったのが新生銀の「廃業支援型バイアウト」事業だ。

新生銀は事業会社などと案件ごとにファンドを組成し、営業赤字だが資産超過の中小企業の全株式を買収する。興味を持つ相手を見つけて事業や不動産を売却し、運用益を出しながら計画的に事業再生や清算を進める。2018年には約10社の廃業や再生を支援した。

「従業員の雇用を維持できたし、老後の資金もある程度得られた。自分としては満点のたたみ方だった」。高橋さんは吹っ切れた表情で話す。

東京商工リサーチによると、18年に休廃業・解散した企業は4万6724社で、前年比14%増えた。70代以上の経営者が55%を占め後継者難も深刻だ。一方で倒産件数は8235件と前年比2%減った。追い込まれる前に、自発的に廃業を選ぶ中小企業が増えている。

ただし現実は甘くない。19年版の「中小企業白書」によると、16年度では35.3%の中小企業が営業赤字で、3割超が債務超過に陥っていた。中小経営者の多くは、金融機関の借り入れに個人保証を付けている。債務超過に陥った後で廃業を選ぶと、返済のために土地など財産の処分を求められかねない。袋小路に入り込む前に、手を打つことが肝心だ。

多くの企業がここに着目している。新生銀は17年、他行に先駆けて事業化した。舛井正俊・事業承継金融部長は「経営者が早期に決断できれば流れる血を減らせる。前向きな廃業を少しでも増やしたい」と話す。赤字が続いていても債務超過に陥る前ならば、事業再生など様々な手を打てる。

中小のM&Aも活況だ。売り手と買い手の情報サイトを手がけるトランビ(東京・港)には、提携する会計士や行政書士などの専門家が、廃業を検討中の顧問先企業の情報を次々登録する。売却に成功する企業は1割強で、残りは清算など廃業手続きに移行するが「M&Aに挑むことで経営者は覚悟を決められる」と高橋総社長は話す。

M&A仲介のストライクは税理士協同組合との提携を強化する。廃業を検討する中小を早期に見つけ、価値の高い段階で売却などの選択肢を提供する狙いだ。提携先は全国10組合にのぼる。

人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)やリクルートなども後継者問題などに悩む中小に対して、それぞれが展開する事業承継サービスへの登録を呼びかけている。

公的制度も整いつつある。18年末、京都府で90年近く続いた建築材料卸が廃業した。赤字と後継者難に悩んでいた経営者の背中を押したのは、18年4月に創設された「自主廃業支援保証制度」。従業員の退職金など廃業に必要な資金を借りられる。各地域の信用保証協会が保証をつけ、銀行などとの交渉も支援する。

京都信用保証協会企業発展推進課の大月秀一課長は「経営者に提案するのは心苦しいが、円滑に廃業を進めるために、新たな手段として利用を検討してほしい」と話す。

一方でトラブルの種も潜んでいる。近年の焦点は「0円承継」。債務超過に陥った企業の経営者から、株式と債務をファンドなどが無償で譲り受け、不良債権を処理したうえで事業再生を目指す取り組みだ。

中小企業基盤整備機構など出資者が明確なら問題ないが、知的財産や顧客基盤のみを吸い取って逃げていく「乗っ取り屋」も増えているという。

■「新陳代謝しかない」経営共創基盤・冨山CEOに聞く

日本の開廃業率は米欧と比べて低水準だ。特に廃業率は米国が10%(11年)、英国が17年に12.2%であるのに対し、日本は同3.5%にとどまる。

「右肩上がりの成長が期待できずイノベーションが重視される時代に、企業の活力を取り戻すには新陳代謝しかない」と主張するのは、カネボウなどの企業再生を主導した経営共創基盤の冨山和彦最高経営責任者(CEO)だ。「テレビドラマのように企業を再生できれば理想的だ。しかし再生は難易度が高く、会社を一度たたんで新事業を興す方が成功確率は高い」

障壁となる経営者の個人保証についても、支援の取り組みが広がってきた。日本弁護士連合会などは14年に「経営者保証ガイドライン」の運用を開始。廃業や倒産時に個人保証を外して自宅や土地といった資産を保全するなどの内容で、弁護士が金融機関などとの協議を手助けする。

冨山氏は「日本の中小企業の多くは年老い、完全な健康体はほとんどない」と話す。経営者自身が撤退か継続かを判断すべきだとしたうえで、こう述べた。「早ければ早いほど売却のチャンスが広がる。なんら恥じることはない」(京塚環氏)

次世代エネルギー研究 G20と

経産省、海外の知見取り込み まず仏独などの6機関

経済産業省は革新的な低燃費技術など次世代エネルギーに関する研究開発を進めるため、20カ国・地域(G20)の主要研究機関と連携する枠組みをつくる。エネルギー技術に関する海外の知見を積極的に取り込む狙い。第1弾として2020年度から同省所管の産業技術総合研究所がフランス、ドイツなど5カ国6研究機関と協力を始める。

G20の研究機関の幹部らが集まる国際会議「RD20」を11日に開き、共同研究開発の枠組みづくりを発表する。

産総研はまず仏国立科学研究センターと次世代の熱電材料の開発に取り組む。電気自動車(EV)に採用されれば、廃熱を効率的に電気エネルギーに変換でき、燃費を大幅に改善できる可能性がある。独フラウンホーファー研究所とは再生可能エネルギーを使って大量の水素エネルギーを生み出す技術を開発する。いずれも仏独が強みを持っている分野だ。

経産省新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)を通じて研究プロジェクトを資金面で支援する。

共同研究の枠組みには仏独の両機関のほか、米国立再生可能エネルギー研究所、カナダ国立研究機構、オーストラリアの連邦科学産業研究機構などにも参加を呼びかけていく。

日本は産総研を軸として独仏以外の研究機関との連携案件もつくるほか、G20の多国間での協力案件も仲介する。地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を再利用する「カーボンリサイクル」や、CO2の回収・貯蔵(CCS)技術などで連携する方針だ。

11日の会議ではG20各国のクリーンエネルギー技術の研究動向を整理して公表する。どの研究機関がどういった分野で技術や人材に強みを持っているかを「見える化」し、連携を後押しできるようにする。G20は6月末の大阪サミットの共同宣言で、次世代技術に関する連携を拡大する方針を打ち出していた。

エネルギーの次世代技術を巡って日本は産総研などが独自に研究開発を進めてきた。ただ気候変動問題などに対応した分野では、欧米の研究機関が先を行く分野も多いとされる。海外の機関とはこれまで案件ごとに連携してきたが、不十分との指摘もあった。

政府はG20として包括的に協力していく仕組みをつくり、技術革新につながる研究を海外から素早く取り込めるようにしたい考えだ。

政府 200社とASEANで都市インフラ整備 9日合意へ

政府が開発協力する東南アジア諸国連合ASEAN)の都市インフラ整備の構想に国内の約200の企業・団体が参加する。交通渋滞の緩和策やキャッシュレス決済システムの構築など、対象となる26都市の機能を効率化する事業計画に基づきノウハウを持つ日本企業が個別に支援する。経済成長に伴う旺盛なインフラ需要を取り込むため、官民が協力して中国や韓国などに対抗する。

国土交通省、外務省、経済産業省など関係府省はASEANの高官を招いた会合を10月8~9日に横浜市で開く。大手メーカーや商社、プラント、銀行など幅広い業種から約200の企業・団体が参加する「スマートシティー・ネットワーク官民協議会(仮称)」の立ち上げを確認し、日本とASEANに加盟する10カ国が協力する方向性を示す文書をまとめる。

スマートシティー人工知能(AI)やIT(情報技術)、ビッグデータなどを使って社会インフラを効率化したり環境に配慮したりする都市だ。ASEANは経済成長や人口増で交通渋滞や廃棄物処理など深刻な社会問題に対処する体制整備を急いでいる。

すでに実証をはじめる計26都市を選んでおり、下水処理や水資源管理など旧来型のインフラだけでなく、電子決済や最先端の技術を使う計画も並ぶ。都市ごとにプロジェクトチームを設け、現地のニーズを把握したうえで日本政府や企業が持つ技術や資金支援策などを提案する運びだ。まずは来春までに2~3の都市との合意をめざす。

各都市の計画で目立つのは都市への人口集中による交通渋滞を緩和する取り組みだ。ベトナムの首都ハノイではITを使った交通管理システムを開発するほか、ミャンマー第2の都市マンダレーは交通データの分析・管理などを課題にあげる。

マレーシアのコタキナバルは次世代型路面電車LRT)など公共交通システムの構築を検討。インドネシアの首都ジャカルタは電車やバスなどすべての公共交通機関の決済システムを統合してキャッシュレス払いできるようにする仕組みを整える計画だ。

安倍政権はインフラ輸出を成長戦略の中核に位置づける。第2次安倍政権が発足した直後の2013年は15兆円だった海外でのインフラ受注は17年末時点で23兆円で、20年までに30兆円に増やす目標を掲げる。

米調査会社IDCはスマートシティー関連の市場規模は23年には約20兆円と18年に比べ倍増すると見込む。日本政府はこれまで新興・途上国のインフラ整備の協力で主体だった道路やダム、発電所などに加え、日本企業が強みとする都市の効率化や環境負荷の低減につながる基盤づくりにも幅を広げるねらいだ。

影響力を増す中国をけん制する思惑もある。中国は経済援助を続けるカンボジアラオスなどと結び付きを強め、ASEANでのインフラ開発に強い関心を示す。中国・アリババグループはマレーシアでの事業に参画する。米国や韓国も現地のインフラ開発に力を入れており、日本も官民あげて結び付きを強化する。

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